2019.01.23
花丸文庫BLACK「運命淫戯~ピンクのオメガと獣人王~」 (西野花:作 駒城ミチヲ:イラスト)発売!
花丸文庫BLACK「運命淫戯~ピンクのオメガと獣人王~」
西野花:作
駒城ミチヲ:イラスト
■あらすじ■
俺の可愛い淫乱ピンク。早く俺の番にしてしまいたい―――
多くのオメガが集められ客を取らされている陰の娼館「養成所」。
かつてそこの男娼だったオメガのユアンは、今は凄腕のハンターとして発情期に抗いながら生きていた。
そんなユアンにつきまとうのは、男娼時代の初めての客で、高額賞金首の獣人王バルド。ユアンは、いつかその首を獲ってやると反発しながらも、バルドの圧倒的なアルファのフェロモンに屈服し、会うたびに激しく抱かれてしまう。
バルドの「早く俺のものになれ」という言葉は孤独な心を甘く揺さぶるが、ユアンには戦い続けなければいけない理由があって―――。
誇り高きアルファの獣人王
×
訳あり淫乱オメガ
濃密エロスファンタジー!
■試し読み■
キーワード:オメガバース 獣人
本文P18~24より
(俺も番を作るべきかな)
そうすれば、この忌々しい発情からも解放されるだろうか。アルファに首を噛んでもらえば、少なくともフェロモンは抑えられる。だがオメガにとって、番う相手を見つけるというのは、そう簡単なことではない。番の関係は、アルファの側のみが一方的に解消することができる。捨てられたオメガはそれ以降、抑制剤も効かず、一生発情期に苦しめられることになり、それで命を絶ってしまうオメガもいるらしいと聞く。
(絶対にごめんだ、そんなのは)
そんなことになったら、ハンターになった意味がない。
ユアンはハンター試験を受けて男娼から自由の身になったと思っていた。けれど、そうではなかったのだ。ユアンがオメガである限り、本能から逃れることはできない。
物思いに沈んでいたユアンは、その時、自身を守る注意力が散漫になっていた。それ故に、横の路地から伸びてきた腕に気づくのが一瞬遅れる。
「!」
身構えた時はもう遅かった。
ユアンは腕を掴まれ、路地裏へと引きずり込まれた。咄嗟に腰の銃に伸ばそうとした手を封じられ、手首を強く握られて背後の壁へと押しつけられる。
「な、あ――――、ンっ!」
唇が熱い感触に包まれた。その瞬間、ユアンはこの身に無礼を働いているのが誰なのか、わかってしまう。
「ん、ん――――」
肉厚の舌が口内を犯し、敏感な粘膜をねっとりと舐め上げてきた。奥で縮こまる舌が強引に捕らえられ、痛いほどに吸われてしまう。息も止まるほどの口づけはユアンの身体に火をつけ、せっかく治まったはずの情欲がまたかき立てられた。
「ア、やっ…!」
押さえつけてくる身体は逞しい。けれどユアンはどうにかしてそこから逃れようともがき、足で懸命に不埒な存在を蹴りつけた。
「――――…痛いぞ。暴れるな」
「うるさい。――――いきなり何をする!」
どうにか両手を突っ張り、目の前の厚い胸板を押し退ける。薄暗い路地に月の光が差し込んで、男の姿を照らした。
「バルド! ――――悪ふざけもたいがいにしろ」
ユアンは男をきっ、と睨みつける。
そこには逞しい美丈夫がいた。背はユアンの頭ひとつ分も高く、やや癖のある黒い髪が背に垂れている。その頭の横で、獣の耳のように黒髪が跳ねていた。金に近い琥珀色の瞳がきらりと光ってユアンを捕らえている。彼はくん、と鼻を鳴らすと、不機嫌そうに唸ってユアンの首筋に顔を埋めた。
「匂いがする。お前、また男を買ったな」
「…仕方ないだろう。発情期なんだから」
「その時は俺が相手をすると、何度言ったらわかる」
「俺がお前に用があるとしたら、その馬鹿でかいブツじゃなくて、首のほうだよ」
そう言うと、バルドは口の端を歪めるように笑い、肩を竦めた。
獣人王バルド。その首には、高額の賞金がかけられている。西の山にある獣人の国を邪魔に思った富豪がバルドを賞金首にした。彼はユアンの獲物であり、そして、初めての男でもあった。
「こんなところにのこのこと出向いて、首を斬られても知らないぞ」
「なんだ、心配してくれるのか?」
「まさか。お前を殺すのは俺だからだ」
物騒な言葉を投げつけられて、バルドが目を細めて笑う。その表情には、どきりとするほどに雄の色気が漂っていた。
「嬉しいが、そこいらのハンターに遅れはとらないさ」
「……俺にも?」
確かに、バルドに挑んで勝てる者はそうはいないだろう。獣人の素手での戦闘力は人間のそれを上回る。その差を縮めるのは武器だが、どんな得物を使ったとしても、彼に勝つのは難しい。ユアン自身、何度か彼と戦ったことがあるが、まずスタミナが桁違いなのだ。そしてその膂力と、獣人ゆえの打たれ強さと、スピード。ユアンも速さには自信があるが、本来獣であるバルドには敵わない。そして人型の時の彼は鞭を使う。人間が獣を従わせるためのそれを、彼が使うのはなんとも皮肉だった。
「お前は俺の嫁にすると決めている」
「勝手に決めるな」
「つれないな。そんなうまそうな匂いをさせているのに」
「……っ」
バルドの手が服の上から這うだけで、身体の底から新たな劣情が湧き上がってくる。さっき三人も男を買って、やっと鎮めたというのに。
「くそっ…、これじゃ台無しだ…っ」
「だから、ヒートになったら俺を呼べと言っているんだ。ベータにお前の相手は無理だ」
バルドはオメガと同様にその存在が少ないと言われているアルファだ。確かにこの男ならば、尽きない体力と精力でユアンを満足させてくれるだろう。
「あっ…、馬鹿、やめろっ」
バルドの手がユアンの下肢の衣服の中に入り込み、掌が下着の上から脚の間を握り込んでくる。股間を熱い感触に包まれ、やわやわと揉まれて、おさまりかけていた熱がまた込み上げてきた。
「っ、あ、あっ…んっ」
「そら、勃ってきたぞ…。ほんとに他の男で満足できたのか」
「い、や…だっ、離せっ…」
抗う声も弱々しい。ユアンとて、腕に覚えのあるS級のハンターなのに、この男にほんの少し触れられるだけで身体中の力が抜けていった。
「可愛いな…、食っちまいたい」
「あん、うっ…」
また口づけられ、強引に舌を吸われてしまい、頭の中が沸騰しそうになる。
(なんで、この男にだけ)
初めての時からそうだった。ユアンはバルドに触れられるだけで、そこから熔けていってしまうような、甘く痺れていくような感覚に襲われる。
「さあ、選べユアン。このまま、ここで俺に抱かれるか、それともお前の部屋に俺を連れていくか」
「んっ、く…うう」
脚の間をさっきよりもきつく揉まれて、突き刺すような快楽が背筋を駆け抜けた。ユアンは悔しさに目尻を濡らしながらも、自分に選択の余地はないことを悟らされるのだった。